相続登記に必要な費用を司法書士が解説

 相続財産の中に不動産が含まれている場合は、法務局で不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する必要があります。「名義変更をするのにどのくらい費用がかかりますか?」と質問を受けることがよくあります。今回は、相続登記にかかる費用を、司法書士が対話形式で解説します。



〔登場人物〕

Aさん=亡くなった父の不動産の名義変更について司法書士へ相談

F先生=司法書士

 

Aさん:先月、父が亡くなりました。父名義の不動産の名義を私に変更するのに、費用はどのくらいかかるでしょうか?


F先生:不動産の名義変更には、登録免許税、戸籍関係書面などの「実費分」と司法書士への「専門家報酬」を合わせた金額になります。まず、登録免許税の金額を計算します。登録免許税の価額は、不動産の評価額で決まります。お父様の所有の不動産の固定資産税納付通知書は、お持ちでしょうか?固定資産税納付通知書は年に1回、不動産の所有者に送られてきます。


Aさん:本日、持参をしています。土地2つと建物1つになります。固定資産税納付通知書の「不動産の評価額」を見ればよいのでしょうか?


F先生:はい。不動産の評価額の4/1000が登録免許税になります。令和7年3月までは、土地の相続のケースでは、100万円以下であれば、登録免許税が非課税になります。


Aさん:土地①の評価額は80万円、土地②の評価額は300万円、建物の評価額は200万円になっています。


Fさん:計算をすると、土地①は非課税、土地②は300万円×0.004=1万2000円、建物は200万円×0.004=8000円になります。合計2万円になります。次に戸籍関係書面の取得費用について計算をしましょう。お父様は出生から死亡まで岡山市に本籍がありましたか?


Aさん:父は生まれは神戸で、仕事で岡山市に移動して、本籍を岡山に移しました。


F先生:わかりました。相続登記は出生から死亡までの戸籍関係書面が必要となります。戸籍は本籍のある市町村役場へ請求をします。岡山市と神戸市の市役所で取得できます。


【法改正】令和6年3月1日から戸籍の広域交付の制度が始まりました。

 戸籍の請求をする本人が、市町村役場の窓口で取得できる制度が始まりました。これにより相続手続きに必要な戸籍を集める作業を短縮できることが期待されます。

 ただし、郵送での請求はすることができないで、直接、窓口に行かなければならない点や、第三者(代理人)からの、請求には対応していません。


実体験】令和6年4月上旬

 戸籍の広域交付の制度の利用を依頼主に勧めて、窓口での請求をしましたが、システムがつながっていないとの理由で、広域交付ができないので、従来通りの方法で進めるように言われました。このように、取得できないケースもあります。


Aさん:相続登記に必要な戸籍は1通だけではなくて、出生から死亡まで必要なのですね。神戸市の市役所まで行かなくてはならないのですか?


F先生:戸籍関係書面は郵送で請求することができます。遠方の市役所まで直接行かなくても取得できます。市町村役場で発行をするときに、手数料がかかります。例えば戸籍謄本は1通450円、除籍謄本、改製原戸籍は1通750円、戸籍の附票は1通300円、住民票は1通300円(※コンビニ発行、市町村役場により異なります)の発行手数料になります。  


Aさん:戸籍謄本とか除籍謄本とかの違いがわからないのですが、結論として、費用はどれくらいになりますか?


F先生:戸籍関係書面は請求をしてみないと正確な金額をこの場でお答えすることはできません。一般的にAさんのお父様のケースですと、3000~5000円になることが多いです。ここまでの相談内容から判断すると、この金額から大きく変わることはないです。


Aさん:その他に取得が必要な証明書はありますか?


F先生:お父様の相続人の方は他にいますか?


Aさん:父の相続人は私と兄がいます。兄との関係も良好で、先日、話合いをして、私一人が相続することになっています。


F先生:法務局へ提出する書類として、Aさんの現在の戸籍謄本(450円)とお兄様の戸籍謄本(450円)が必要になります。その他にも、Aさんの住民票(300円)、Aさんとお兄様の印鑑登録証明書(1通200円/岡山市)が必要になります。合計1600円になります。


Aさん:登録免許税2万円、実費分5000円~8000円ということですね。私自身で相続登記を申請することも検討していたのですが、戸籍を集めたり、遺産分割協議書や登記申請書の作成をするのは、難しいと感じています。先生に依頼したら司法書士報酬はいくらになりますでしょうか?


F先生:司法書士報酬については、不動産登記3万5000円(税別)、物件加算2000円(税別)になります。その他、郵送費や登記事項証明書(1通600円)は実費分をご負担いただきます。


Aさん:戸籍の取得や、遺産分割協議書の作成もお願いできるのでしょうか?


F先生:戸籍関係書面の取得、遺産分割協議書の作成まで、ワンストップで対応します。その他、相続不動産に見落としがないか、名寄せ帳を取得して調査もします。他に相続人がいないかも戸籍からお調べします。


Aさん:そこまでしていただけるのですね。是非、先生にご依頼をしようと思います。インターネットで司法書士への報酬を調べると15万円が相場とありました。先生の事務所は費用が他よりも安いのですか?


F先生:司法書士報酬は事務所により異なります。Aさんの場合は、お父様が亡くなった後、すぐに相談に来られているので、手続きとしては一般的なものになるので、費用は高くないかもしれません。ただ、数次相続(被相続人が亡くなって登記をしない間に相続人が死亡したケース)では、費用はこれより高くなります。相続人の数や戸籍取得の通数によって、報酬は個々に決めています。


Aさん:わかりました。では、見積は記載の通りに、登録免許税2万、証明書費用5000-8000円、司法書士報酬3万7000円(税別)、その他、実費分(郵送費、登記事項証明書)でよろしいでしょか?


F先生:はい。合計で6万5000円+郵送費など実費分になります。


Aさん:本日はありがとうごいました。相続登記の費用がどのくらいかかえるのか不安でしたが、先生に相談してよかったです。是非、先生に手続きをお願いします。

以上


今回は相続登記に必要な費用について解説をしました。個々の事例により、費用は異なりますが、費用の計算方法は説明した通りになります。是非、ご参考にしてください。


作成者:司法書士 福島良太(岡山県司法書士会 登録番号920)

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