岡山市の司法書士の福島良太です。
岡山市で会社設立をするときのポイントを司法書士の視点から解説します。司法書士として事務所を開業してから、会社設立登記をしてきたので、その経験を元にお話をします。
〔費用〕
会社を設立する時に支払う必要のある費用は、以下になります。
①登録免許税(株式会社15万円、合同会社6万円)
②定款認証代(株式会社約5万円)
③印紙代(株式会社4万円、合同会社4万円)※電子定款の作成で0円
④司法書士報酬 ※事務所により異なります。
※税理士事務所の会社設立無料などは、顧問契約とセットになっていることが多く、会社設立登記は司法書士に外注をしています。手数料0円~と記載している税理士事務所も顧問料でその費用は回収しています。自腹を切って赤字で設立をサポートしてくれることはありません。司法書士事務所に会社設立を依頼すると、顧問契約は必要ありません。
〔準備が必要なもの〕
・会社実印
・発起人(及び役員の)印鑑登録証明書 2通
会社の設立の時には、会社実印で押印をする必要があります。最短で会社設立を希望する場合は、社名が決まり次第、注文することをオススメします。印鑑の業者によっては、発注から届くまでに1週間程度かかることもありますが、当日、注文で翌日に届く業者もあります。
〔会社設立登記〕
個人事業主の方が法人化をするとき、新たに会社を作り事業を始めるときには、会社設立登記をする必要があります。人間は出生することで誕生しますが、会社は設立登記をすることで誕生します。
この会社設立登記を代行するのが司法書士の役割です。会社設立登記は手続きが煩雑で、検討事項も多くあります。5年後10年後まで考えて、どのような会社にしたいかを司法書士が1つ1つ専門家の視点からアドバイスをしますので、安心して手続きを進めることができます。
会社を作るときに、依頼者の方に事前にチェックシートを記載してもらうようにしています。記載内容を元に1つ1つ説明をして不明点やメリット、デメリットを伝えて手続きを進めていきます。依頼者の方に事前に検討をして欲しい主な点は以下になります。
〔会社形態〕
最初に決めるのは、会社を「株式会社」「合同会社」のどちらで設立するのかという点です。近年は、会社設立の約2/3は株式会社、約1/3は合同会社の形態になっています。合同会社は平成17年度の法改正により創設された会社形態で、まだ一般の人には馴染みが少ないかもしれませんが、年々合同会社での設立は増えています。その他、合資会社、合名会社という選択肢もあります。5年後10年後まで考えて、どのような会社にしたいかを考えて、それに合った会社形態を選択するのがよいと思います。合同会社は登録免許税の費用が株式会社に比べて安いというメリットがありますが、株式会社に比べて出資を集めにくいなどのデメリットもあります。
参考記事
岡山県で最短1日で合同会社の設立登記を完了させる方法とは!?
〔定款作成〕
その次に「定款」を作成します。定款とは「会社の憲法」と呼ばれている書類で、会社設立登記の際には法務局へ提出する必要があります。その定款の中身を1つ1つ決めていきます。株式会社を設立する場合は公証役場で定款の認証を受ける必要があります。岡山県内で会社を設立する場合は、岡山県内の公証役場で認証を受けます。岡山県内にも公証役場は複数あるので、どの公証役場に行けばいいのか?と少しわかりにくいですが、公証役場は岡山県内の公証役場であれば、どの公証役場を選んでいただいてもOKです。
(例)岡山公証人合同役場、岡山公証センター、倉敷公証役場 など
また、紙の定款の場合には、定款認証の際に、認証手数料とは別に印紙代(4万円)がかかります。ただ、電子定款を作成することで、印紙代(4万円)が0円になります。節約のためにも電子定款の作成をオススメします。
※電子定款とは、定款をpdf化して、作成者の電子署名をしたものです。定款に電子署名をするためには、電子印鑑を所有している必要があり、プラグインをする必要もあり手続きが複雑になります。司法書士にご依頼を頂くことで、印紙代(4万円)が節約できます。
〔定款・公証役場の事前チェック〕
公証役場に電話やメールでお願いをすると、定款の事前チェックを行ってくれます。定款認証に必要な、「電子定款委任状」「印鑑登録証明書」「身分証のコピー」など、必要書類の記載についても事前に修正があれば教えてもらえます。定款をメールやFAXで送付してから2~3営業日で返信が来ることが多いですが、お急ぎでの旨をお伝えすると、翌日にご連絡をいただけることもあります。
その他、実質的支配者の申告書の提出も定款認証の際に必要になります。会社の株主構成などで、会社の実質的支配者を特定して、その方が反社会的勢力ではないことを申告する書類を提出します。親会社が子会社を設立するケースや拒否権付種類株式を発行するケースなどでは、実質的支配者を特定する作業が複雑になることもあります。
子会社を設立するケースでは、親会社の登記事項証明書や株主リストなど、その他の追加書類の提出を求められます。その他、親会社の定款の事業目的と子会社の定款の事業目的の同一性についてもチェックを受けます。会社法上、会社は事業目的の範囲内で権利義務を負うことになるので、事業目的とは関係のない子会社の設立はできないと解されるからです。これまで、親会社と子会社(設立会社)の事業目的に共通する部分を入れるようにとの指摘を受けたことがあります。
〔目的〕
その会社がどのような事業を行うのかを定款に記載します。(例)不動産業など
事業目的は銀行から融資の審査の時などにチェックされ、融資の条件に合わない場合は改めて定款変更をするように求められることもあります。また、許認可が必要な事業をする場合は、その事業内容を正しく定款に記載する必要があります。事業目的の数に制限はなく、将来行う事業の目的を記載することもできますが、どのような事業を行っている会社かを表す部分ですので、実際に行う予定の事業を記載するとよいでしょう。定款の目的の記載方法に悩む際には、同じ事業を行っている他社の登記情報を取得して、それを参考にすれば良いです。
〔資本金〕
会社の資本金を決めます。資本金は1円から設立可能ですが、資本金は、会社の信用力を表します。資本金が増えてくると、金融機関からの融資を受けやすくなったり、取引先からの信用力もアップします。また、消費税や法人住民税にも影響します。100万円~300万円からスタートする会社が多い印象です。1円から設立は可能ですが、極端に低い額はオススメできません。会社設立後に増資をして資本金を増やすこともできます。また、会社設立後に許認可を取得する場合は、資本金の最低額が定められているケースもありますので、その基準を満たす金額にする必要があります。
〔株式〕
株式会社を設立する場合は、「株式」に関する事項も決めます。株式を何株、何円で発行するのか、などです。1株いくらで発行するのかも自由に決めることができ、1株1万円、1株5万円で設立するケースが多いです。種類株式(優先株式・拒否権株式など)を発行するケースもあり、今後の会社の経営方針などに合わせて設計する必要があります。投資を受けて会社を設立する際に、種類株式を発行する会社が多いです。
〔機関・役員〕
株式会社を設立する場合は、取締役会、監査役を設置するかどうか、取締役や代表取締役は誰にして、任期は何年にするのか、などを決めていきます。取締役会を設置するには、取締役3名、監査役1名が役員に就任する必要があるので、人員の確保のハードルがあります。
非公開会社では、役員の任期を10年まで伸ばすことができますが、任期の途中で正当な理由がなく解任をすると委任契約の破棄となり、損害賠償をされる可能性もありますので、会社の実情に合わせて任期を決めることが大切です。
株式会社では、任期の満了の際に、役員の重任登記が必要になりますが、合同会社などの持分会社では、役員の任期の定めはありません。任期の期限がないために、役員の変更登記をする必要がない点もメリットの1つに挙げられます。
〔事業年度〕
定款では、会社の事業年度を定めます。個人事業主は、12月末が決算月となりますが、会社では、決算月を自由に定めることができます。事業年度は消費税の免税を受けられる期間にも影響をします。事業年度の末日が、会社設立日から近いと、決算の手続きや消費税の免除を受かられる期間が短くなることがああるので、なるべく、設立日から離すことをオススメしていますが、会社の規模や方向性により、決めることをオススメします。
〔登記申請〕
会社の定款認証が終わると、今度は法務局へ会社設立登記を申請します。岡山では、商業登記の管轄法務局は岡山地方法務局本局の1つだけですので、本局に登記を申請します。登記の申請には、定款の他にも、就任承諾書や払込書面、取締役の過半数の一致証明書など、様々な添付書面が必要になります。
行政書士と司法書士の「会社設立」業務の相違点として、行政書士は定款認証までしか法律上行うことができません。会社設立業務の途中までして、司法書士にバトンタッチをすることになります。司法書士は定款作成+会社設立登記まで全てワンストップで行えます。間に入る業者が多ければ多いほど、当然に依頼主の方の負担する費用は高くなる傾向にあります。最初から司法書士へ依頼することをオススメします。
一般的に、登記は申請から完了まで1週間程度かかります。ただ、会社設立登記は他の登記よりも完了までの日数が短いと感じることもあり、申請したその日の午後に登記が完了していたこともあります。※原則、法務局の登記完了予定日に合わせて1週間程度はかかる認識でスケジュールを組むことをオススメはします。
司法書士に依頼をすることで、多くの検討事項を相談でき、適切な提案を受けることができます。これから成長していく大切な会社の土台作りは、会社設立の専門家である司法書士にお任せください。
依頼者の方にご準備いただくのは、①印鑑証明書 ②資本金の払込み ③会社印の作成
の3点のみです。残りの手続きは司法書士が代行します。
※印鑑証明書は公証役場へ提出用に1通、法務局に提出用に1通の計2通をご準備ください。
会社の印鑑は法務局へ届出をして、会社(法人)の実印となります。また、会社設立時には印鑑カードの申請もしておくことをオススメします。会社を設立するときは会社実印を早めに準備をすることをオススメします。
岡山市の会社設立Q and A
1. 合同会社は公証役場での定款認証は必要ないのですか?
→定款認証を受ける必要はありません。認証手数料(約5万円)がかからないので、株式会社よりも安く設立が可能です。
2. 定款に電子証明をすると印紙代(4万円)を支払う必要がないのですか?
→電子定款を作成することで、印紙代は払わなくてもよいです。当事務所にご依頼いただければ、電子定款を作成しますので、印紙代の節約になります。
3. 資本金に最低額はありますか?
→資本金は1円でもOKです。2006年の法改正の前は、株式会社を設立するには、資本金が1000万円が必要でしたが、現在は1円から設立できるので、会社を作りやすくなっています。
4. 会社設立は税理士や行政書士ではなく、司法書士に依頼するメリットは何ですか?
→行政書士は、定款作成はできますが、会社設立登記をすることはできません。結局は自分自身で登記申請をするか、司法書士に依頼することになります。税理士はそもそも会社設立の手続きをできません。行政書士や税理士の方が、登記申請の代理、相談を受けただけでも非司法書士行為として刑事罰になることが法律で定められていて、実際に逮捕をされているケースもあります。
5. 取締役会を設置した方がいいですか?しない方がいいですか?
→取締役会を設置する場合は、原則、取締役3名、監査役1名の計4名が役員に就任することになりますので、人員の確保が1つのハードルになります。また、取締役会を設置することで、株主総会ではなく、経営判断は取締役会ですることになります。自己資金で会社設立して、株主=取締役のケースでは、取締役会を設置する必要性は少ないでしょう。
6. 株式会社と合同会社のどちらがオススメですか?
→会社設立時の登録免許税は合同会社の方が安いために、株式会社よりもスタートしやすいです。制度の新しい合同会社よりも株式会社の方が信用度が高く、出資を募ったり、融資を受けやすいと言えます。会社をより大きく成長するつもりなら、株式会社をオススメします。
7. 資本金の払込みはいつすればいいですか?
通達(令和4年6月13日)により変更になりました。変更後をご覧下さい。
(変更前)
→定款作成日の後に発起人の口座にする必要があります。定款作成日よりも前に作成をすると設立登記が通らず、入金をやり直すことになります。
(変更後)
→定款作成日よりも前の払込み(当該設立に際して出資されたものと認められるものであれば)であっても登記可能になりました。
ただし、定款作成日よりも前の払込みが必要などの事情がなければ、従来通りの定款作成後の払込みをオススメします。
8. 会社の設立日はいつになりますか?
→会社の設立日は、設立の登記申請をした日になります。登記を申請してから完了まで時間は1週間程度(目安)かかりますが、登記の完了日ではなく、登記の申請日になります。設立の日にこだわりのある方は、土日祝日は法務局が営業時間外なので、その日付では申請できないことにご注意ください。また、会社設立日は設立する月の2日以降にすることで、法人住民税の均等割を節税することができます。区切りよく1日に設立をするよりも、2日以降に設立することで少し税金を安くできます。
9.資本金は誰の口座に振り込めばいいいですか?
→原則、発起人の口座になります。会社設立前は、法人口座を作成できないために、発起人の個人口座に振込をします。また、振込履歴の記載のある通帳などは、会社設立登記のときに法務局への提出を求められます。
10. 有限会社を設立することはできますか。
→有限会社の制度は廃止をされています。現在でも有限会社は存在していますが、新たに設立をすることはできません。
11. 電子定款認証をビデオ通話会議で行った場合、面談後どのくらいの時間で認証が完了しますか?
→電子定款認証をしてから、完成までにかかる時間は1時間程度の印象です。公証役場により異なるかもしれませんが、当日に定款認証→登記申請の手続きは可能です。
12. 定款に定める本店の所在地は、どこまで定めるのはオススメですか?
→岡山市で会社を設立する場合は、「岡山市」で作成をすることをオススメします。岡山市北区など、区まで定めることは可能ですが、設立後に岡山市中区などに移転をする際に、定款変更が必要になり、株主総会の開催が必要になるので、手続きの工数が増えることになります。
13. 資本金を払い込んだ後、会社設立までに資本金を使用することはできますか?会社設立に必要な登録免許税などを資本金から支払いたいです。
→発起設立(※募集設立での設立方法もありますが、一般的に使用されることはほぼありません。)でのケースでは、資本金は払込み(出資)後に使用することができます。設立日に残高がなくても大丈夫です。
14. 会社の代表者(代表取締役)に就任するのですが、代表者は住所が登記されると聞きました。自分の住所が公開されるのでしょうか?
→原則、会社の代表者の住所は登記簿に公示されます。インターネットでの検索等でひっかかることはないと考えますが、登記簿は誰でも費用を払えば取得することができ、その登記簿には記載されています。
15. 司法書士に会社設立を依頼して、会社設立登記が完了したら、他にすることはありませんか?
→開業届、年金、社会保険の手続きなどをする必要があります。そのときに法務局で設立した法人の登記事項証明書などを合わせて提出します。
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