ファクタリング取引の債権回収について

こんにちは。岡山市の司法書士の福島良太です。  

今回はファクタリング事業を運営する上でのリスクの軽減についての記事になります。債権の未回収のリスクについて事前にできる対策について解説をします。


まず、債権の未回収になるケースを2つの段階に分けて考えます。

1. ファクタリングをした債権が、支払時期になる前に問題が発生した場合。

2. ファクタリングをした債権を譲渡人が回収した後に、譲受人に支払わない場合。


今回は、1 のケースを事例を挙げて検討します。


◎ケーススタディ1◎ 譲渡人が、差押、仮差押を受けた場合。

 ファクタリング後に、譲渡人が他の債権者から、(仮)差押を受けたとします。第三債務者(売掛先)は、譲渡人への支払を禁止されます。この場合、譲受人は第三債務者から回収をすることができなくなります。その、対策として、債権譲渡登記、確定日付のある債権譲渡の通知又は承諾が考えられます。


◎メモ◎ 確定日付のある債権譲渡の通知又は承諾

 債権譲渡があったことを、債務者、第三者に対抗するためには、確定日付のある債権譲渡の通知又は承諾が必要になります。これは、譲渡人から通知をする必要があります。代理人として、譲受人が通知をすることは可能です。ただし、取立権限を留保している二者間ファクタリングでは、債権譲渡通知を預かりはしますが、通知まではしないことが多いです。


◎メモ◎ 債権譲渡登記

 債権譲渡の通知・承諾に変えて、債権譲渡登記をすることで、第三者対抗要件を備えることができます。これは、直接、債務者への通知などをする必要がないので、ファクタリングをした事実を相手方に知られる可能性は下がります。


◎コラム◎ 債権譲渡登記をするデメリットとは

 債権譲渡登記をすると、その旨が登記簿に記載されます。ただし、これは法人の登記事項証明書に記載がされるということではなく、別途、債権譲渡登記の登記簿に記載がされます。登記情報で確認をすることもできます。一般的に、取引先の債権譲渡の登記簿を確認する会社は少ないと考えられて直接、取引先に知られるリスクは高くないとも考えられますが、銀行や保証協会、他の金融機関が確認するケースがあり、債権譲渡登記をしたことにより、融資が通らなかったり、保証会社の審査が通らないケースも過去にありました。その他、登記記録を見た営業会社から、しつこく電話がかかってくるケースもあります。


 ケーススタディ1のケースでは、差押等を受ける前に、債権譲渡の対抗要件(債権譲渡登記、債権譲渡通知)を備えておけば、債権が確定的に移転したことを、差押権者等に主張できるので、リスクは大きく軽減をすることができます。ただし、租税債権との関係では、対抗要件具備の前に、納税期限を過ぎている税金がある場合は、債権譲渡で対抗できないことになります。つまり、ファクタリング会社は与信をする段階で税金の滞納について把握しておくことが大切です。


◎ケーススタディ2◎ 譲渡人が、債権の二重譲渡をした場合。

 ファクタリングをした債権を、譲渡人が二重譲渡をしたケースを考えます。このケースでは、対抗要件を備えることができれば、債権の回収が可能になります。


◎メモ◎ 債権譲渡登記.VS. 債権譲渡通知(又は承諾)

 債権譲渡の対抗要件は、債務者に対しては譲渡人からの債権譲渡通知、第三者へは、確定日付のある債権譲渡通知となります。この通知は第三債務者(売掛先)の承諾でも可能です。では、債権譲渡登記との関係ではどうなるでしょうか?債権譲渡登記は、登記をすることで、第三者対抗要件を備えることができます。つまり、売掛先に通知をしなくても、二重譲渡を受けた相手方への対抗要件は、登記の時に備えることができるのです。


◎コラム◎ 債権の二重譲渡の可能性

 民法を学習していると、二重譲渡の事例の問題が多く出題されます。勉強しているときは、「実務でこんなこと起こるの?」と考えていましたが、この二重譲渡は起こりうることは実務でもあります。物権(不動産)は、登記制度により所有者が公示されています。一方、債権は、公示されていません。つまり、債権が二重譲渡されても問題が発生するまで気がつかないのです。ファクタリングを利用するお客様は、資金繰りに苦労しています。会社の倒産を防ぐために、現金を得るために、二重譲渡をしてしますことがあるのです。


 二者間ファクタリングでは、債権譲渡通知、債権譲渡登記を留保している場合に、二重譲渡が判明してしまった場合は、その時点ですでに相手方が対抗要件を備えてしまっていることがあります。対抗要件を留保することにより、利用者にとっては、有利な条件になりますが、事業者にとっては大きなリスクとなります。


◎ケーススタディ3◎ 債権が不存在だった場合。

 架空の債権を譲渡された場合について考えてみます。ファクタリングは請求書を買取りますが、その請求書が架空の売掛金である可能性もあります。この場合は、売掛先が存在しないので、売掛先からの回収は不可能です。ファクタリング契約を解除して、お金を返金してもらうことになります。請求書を偽造して、債権譲渡をすることは詐欺行為になります。それを覚悟して、債権譲渡をする会社から、お金の返金を受けるのは難易度が高いと考えます。


◎コラム◎ 集合債権譲渡登記

 債権の二重譲渡や架空債権の譲渡への対策として、集合債権譲渡登記をしておくことが考えられます。ファクタリング契約の解除による原状回復請求権を、売掛先への将来債権を担保しておくことで、リスクを下げることができます。ただし、譲渡人が破産をしたケースでは、破産管財人へ主張できるのか、など回収までのハードルはあります。それについては、別の記事で書こうと思います。


◎ケーススタディ4◎ 売掛先が払わない場合

 ファクタリングが有効に行われても、売掛先が支払をしない場合があります。この場合は、譲渡人に保証を求めることはできずに、債権回収のリスクは、事業者が負うことになります。ファクタリングは、債権回収の責任を負うことで、貸金業の規制を外れることができているので、このリスクからは逃れるのは難しいでしょう。しっかりとした与信管理を行うことで、リスクを減らすことが大切となります。


 今回は、ファクタリング債権の回収についての記事を書きました。債権譲渡登記、債権譲渡通知、契約書の記載等により、リスクの軽減をすることができるようになります。今回は以上です。


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